公開日 2026年07月02日
脳卒中や運動麻痺などにより下肢装具を使用されている方にとって、装具は単なる「道具」ではありません。歩行を支え、自宅での生活や仕事、買い物、地域活動など、その人らしい暮らしを支える大切な生活基盤です。
多くの方は、入院中に医師、理学療法士、義肢装具士など多職種の支援を受け、懸命なリハビリテーションの末に歩行能力を獲得し、退院されます。
しかし、生活期に装具が破損しても、十分な修理や調整を受けられず、せっかく獲得した能力を維持できなくなる事例が少なくありません。
これは本人や家族の生活の質を低下させるだけでなく、転倒や活動量の低下、介護負担の増加を招き、結果として医療費や介護費の増大にもつながる重要な社会課題です。
私は日々、生活期の装具ユーザーや、その方の支援者からの相談を受ける中で、「修理したくても対応できない」「訪問や調整を続けるほど経営的に成り立たない」という現実を目の当たりにしています。
その背景には、現在の修理報酬の仕組みがあります。
例えば、足部の内張り交換は製作要素として評価されていますが、実際の修理では、見積書や申請書類の作成、行政との手続き、利用者との連絡、訪問や移動、古い部材の除去・廃棄、接着面の処理、薬剤を用いた加工など、多くの工程が必要となります。しかし、こうした修理に伴う実務は十分に評価されているとは言えません。
一方で、義足や一部の修理項目には修理加算が設けられていますが、多くの装具修理では同様の考え方が適用されておらず、現場との乖離が生じています。その結果、修理や生活期フォローに積極的に取り組みたくても、継続が難しい事業所が増えています。
これは義肢装具士の待遇だけの問題ではありません。必要な修理が適切な時期に行われないことで、最も不利益を受けるのは装具ユーザーです。
地域包括ケアシステムや介護予防が重視される現在、装具を「作って終わり」とするのではなく、生活期まで継続して支える仕組みへ転換することが求められています。適切な修理やフォローは、障害のある方の自立や就労、社会参加を支え、介護の予防にも直結する重要な投資です。
現在、補装具制度の見直しに関する議論が進められていますが、生活期の修理やフォロー体制についても、ぜひ重点的に検討していただきたいと願っています。
制度改正は、義肢装具士のためだけではありません。
障害のある方が住み慣れた地域で安心して暮らし続けられる社会を実現するため、そして、必要な支援が将来にわたって継続できる制度を築くためです。
私は、その第一歩として、現在一部の修理項目に認められている修理加算の考え方を、生活期に必要となるその他の修理にも適切に適用できるよう見直すことを提案します。
装具ユーザーが安心して暮らせる社会を守るために、生活期の装具支援の充実について、ぜひ多くの皆様に関心を寄せていただければ幸いです。
株式会社COLABO
代表取締役・義肢装具士 久米 亮一
