公開日 2023年11月26日
更新日 2023年12月03日
脳卒中などによりリハビリ病院などで「立つ」、「歩く」の練習を行って装具を購入して退院した方にとって、装具は生活を維持していくためにとても大切な役割を担っています。
ところが生活の中で装具が壊れても修理ができなくて、病院で必死に療法士さんと練習して得ることができた能力を維持できなくなっている方が大勢いらっしゃいます。このことは本人や家族に負担が増えるだけでなく国の医療費、介護費の負担が増えることにもつながります。それは由々しい問題なのです。
生活期の装具の修理が積極的に行われない理由として、義肢装具製作会社に利益が「でない、少ない」ことが考えられます。一つ例を挙げれば、足部の「内張りの交換」は製作要素と同じ1,250円です。製作要素とは、一連の1装具の製作工程の中で行われる行為に対しての価格です。しかし、修理はそれに加え、単独での対応にかかる人件費:移動費、事務経費(見積りをあげたり書類のやり取りを役所や本人と行ったり)、加工費:古い内張りの除去及び廃棄、接着面のクリーニングや接着に適した状態にする作業(薬品を使います)などが必要です。ちなみに「継手及び支持部の交換」には1,300円が項目ごとに加算され、義足や義手は完成用部品の1つごとの交換につき各2,750円ずつ加算されます。ですが、その他の加算要素の交換には加算できません。唯一修理に必要な経費や作業費が含まれるのが「足底ゴム交換」のみです。
現在、補装具評価検討会で、価格や対応について協議が行われています。委員の先生方が補装具ユーザーに適切に届くように、実際に行う私たち義肢装具士の報酬についても真剣に話し合ってくださっております。
ところが、議事録を読むと、下肢装具の価格検討について発言してくださいました先生がいらっしゃいましたが議論が間に合わないとの理由で行わないことになりそうです。装具の生活期のフォローや修理などについては、議論にもなりませんでした。
しかし、それは困ります。理学療法士の皆さんが一生懸命装具フォローについて話し合っている今、ここを改定しないと義肢装具士は個別対応の装具の製作や修理に向かわないのです。待ったなしなのです!
生活期の装具ユーザーのフォローなくして、障害者の生活は守れません。生活期の装具をフォローしている義肢装具士の皆さん、利益が出ないので在宅の装具修理を禁止している義肢装具製作業者の皆さん、どうかご発言ください。私は緊急的にでも単純に「その他の加算要素」の交換にも「継手及び支持部の交換」の1,300円を加算できるようにしたらいいのでは、と考えました。
装具の修理が積極的に行われるようになり、障がいをお持ちになっても住み慣れた地域で生き生きと暮らせる国になるといいなぁ…と切に願わずにはいられません。
株式会社COLABO 代表取締役 義肢装具士 久米亮一
以下、議事録
議事録はこちらから(外部リンク)